脳卒中のリハビリテーションで押さえておいてほしいたった3つのこと

脳卒中 リハビリ

私のブログを読んでくれている方はきっと、脳卒中の臨床に興味を持ってくれている方が少なくないかと思います。


実際、臨床での半分くらいは脳卒中の勉強を主にしていました。


これまで急性期・回復期・療養・通所・訪問と様々な場面での脳卒中患者さんのリハビリに携わり、課題指向型リハ・ボバース概念・脳画像を勉強し、認定理学療法士も取得しました。



ですが脳卒中の理学療法は本当に多様で難しく、同じ診断名でも症状が大きく違ったりしますし、予後もよめなかったりします。


つまり診断名だけでは、機能障害はわからないという事になります。


脳卒中 運動麻痺


視床出血 感覚障害


後大脳動脈領域の梗塞 視野障害


被殻出血 運動麻痺が強い


脳幹出血 すごく重度の障害


ラクナ梗塞 軽度の障害


確率として、これらが当てはまる可能性は高いかもしれませんが違う場合やそれ以外の症状を有することもあります。


これらの個別的な症状に合わせて、理学療法も最適なプログラムを用意する必要があります。


エビデンスで言われている下肢装具療法や立ち上がりの反復が絶対的に正しくて、ボバース概念やPNFコンセプトを絶対に用いてはいけないというふうに考えてしまうと考えを狭めてしまいます。


今回は私が脳卒中の理学療法において大切に考えているのは


①脳画像をみること


②発症後どの時期なのか


③ゴールとなる生活環境


この3点です。



この3点が理解できていれば、どの患者さんと同じような理学療法なんてことには絶対にならないです。





なぜこの3つが大事なのかを書いていきます。




脳画像は患者さんの情報の倉庫みたいなもの



前述しましたが、同じ診断名でも症状はかなり異なります。



例えば視床出血。


視床出血は感覚障害が起こりやすいというのは常識ですが、何故生じるのかと言うと後大脳動脈から分岐する視床膝状体動脈に血行力学的ストレスがかかりやすいからだといわれています。

視床出血 血管 分岐
※脳外臨床研究会 山本先生の講義資料より引用


もちろん脳出血のリスクファクターには高血圧などがありますが、その中でも視床出血が起こりやすいのには血管の構造そのもにも原因があるという事になります。


そして、視床膝状体動脈は視床の中の特殊核である後外側核(VPL核)に分岐します。



このVPL核が、体性感覚を感覚野に送る中継点となっています。


なので視床出血には感覚障害が起こることが多いのです。



ですが、視床出血は感覚障害だけでしょうか?


VPL核を中心として、出血がどのように広がるかで症状が大きく変化します。


※脳外臨床研究会 山本先生の講義資料より引用


視床にはVPL核以外にも沢山の特殊核があり、そこも出血によって障害を追えばその特殊核の役割の領域が障害を受けます。


VL核であれば小脳症状や運動における筋収縮の粗大なプログラム、VA核であれば眼球運動や問題解決などに問題が生じる可能性があるということになります。


これらの情報は詳しく医師の処方せんには書かれておりません。


つまり自分で脳画像をみて把握しないといけません。


こういったことが脳画像にはすべて記されています。


脳画像を見ることで、機能障害に対してどのようなアプローチを展開するのがキーになります。


とにかく脳画像を見て、どの部位に問題がありそれによってどんな障害が起こるのかを考察することがまず一番目に行わなければいけないことです。



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↑脳画像を理解するのに最も適したテキストだと思います。


私が初めて、発売日に購入したテキストです。笑




急性期・回復期・在宅では行うことは違う


ごくごく当然のことですが、急性期と回復期、そして在宅領域ではアプローチや関わり方は異なっていきます。



①脳の回復段階は3つに分けられる

脳卒中 リカバリーステージ


脳の回復段階は3つに分けられると言われています。


a.脳の可塑性による回復(1st stage)

発症初期に運動機能が急激に回復する場合は脳浮腫による錐体路の圧迫が改善することや、神経生理的な接続のある部位の血流や代謝の改善(Diaschisisの改善)であるとされています。【井上,2010

それとは別に神経系の可塑的変化があるとされて、脳内に新しい神経ネットワークを作り,残された正常な組織が働くことでの機能回復であり、その回復は長期にわたるとされています。


脳(神経系)の可塑性は1974年のBRAINにて、Alf brodalが提唱した概念です。
自身が左片麻痺になった際に様々な実験を行なって、その当時行われていた検査では拾いきれない問題点がたくさんあることを話されています。

その中でbrodal
中枢神経はそれぞれがその特定の構造および特定の機能を有する多数の微小単位からなる。
これらは非常に複雑でかつ、豊富に相互接続されている。
一部の破壊は必然的にほかの機能にも影響を及ぼす。
脳損傷後の回復のいくつかは求心性繊維の中断や変性によって断絶されたシナプスの残りの繊維からの再誘導によって説明できる。
としています。



脳機能は一度損傷すると基本的には回復はないですが、周辺の組織やほかの部位がその機能を代償すると言われています。(Jaillard A etc,Brain 128,2005)


脳のマッピングの変化は常に可変ですが、使用頻度とその質に依存するため(Nudo etc,Muscle and Nerve 24,2001)、そこの回復を目的とした治療が行われなければならないことになります。



課題思考型でも、ボバースでも、PNFでも、しっかり目的を持って治療を行わないと量も質も高められません。


脳の可塑性が高まるのは発症直後とされており、そこから3カ月ほどで右肩下がりになっていきます。


この時期に大切なのは、

・臥床を防ぎ廃用を予防すること


・麻痺側の機能を高めること

と、私は考えています。


急性期でPusher症候群のような症状を持つ患者さんの特徴としてよく診られるのが、立位で非麻痺側の下肢が突っ張り、麻痺側に倒れてしまう・・・とかだと思います。


これに対して、エビデンスとしては鏡を見せるといいなどいわれていますが、そもそも麻痺側下肢や体幹の伸展機能が失われていれば、麻痺側寄りへ荷重をかけることができません。


鏡を見せる前に、しっかりとPostual setを行い臥位や座位レベルでも下肢・体幹のStabiliyが得られている状態を得ないといけません。


非麻痺側体幹の賦活を行うことで麻痺側下肢のStabiliyが得られ、麻痺側下肢の筋活動のfeed backが麻痺側体幹の促通となる。(図:高草木 薫,臨床神経学49巻 6号 2009より引用)


そのための手段はハンドリング、ティルトテーブル、高座位、LLBでの立位など様々な手段があります。


そこの機能が得られることで基底核や小脳にも影響があり、また小脳や基底核の機能が姿勢制御、はたまた随意運動の回復にも影響します。

※高草木薫先生講義資料を改編


いったいどこのレベルの障害なのか?


そこがわかるだけでも、治療の個別性・オリジナリティがうまれより患者さんに合わせたオーダーメイドの治療が提供できます。


麻痺側機能の回復には姿勢制御の回復が必須であることは以上のことからわかると思います。


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姿勢制御、つまりモーターコントロールはどの疾患や人間にも当てはまる考え方なので人を診る仕事(STやAT、柔整など含めて)なら絶対に学ばないといけない理論だと思います。


少し脱線しましたが急性期の脳卒中の患者さんを診る際は、脳の可塑性とそれを最大限に活用するための姿勢制御の考え方をもってもらえればと思います。


b.非障害側半球による代償(ネットワークの再構築:2nd stage

3ヶ月以降の回復としては、皮質間のネットワークの再構築が行われると言われています。


再構築していくということで、新たな運動プログラムを明確にしていくことが必要になります。


具体例としては、被殻出血の患者さんなどで大脳基底核ループのなかでも連合野ループに障害を受けて運動の選択にエラーが出てる方などは、発症早期は発症前のプログラムで動こうとされ危険行動が多くなることを個人的に多く経験します。



ですが、この3ヶ月くらいを過ぎてくると危険行動が減ってきて一見良くなったように思えたりしますが、トランスファーや歩行練習での方向転換などを見ているとある一定の方向にしか回れないなど実に非効率な運動プログラムを選択することがあります。

※脳外臨床研究会 山本先生の講義資料より
トランスファーという運動を行うと決定した際に、自分の中で可能と思われるいくつかの運動パターンから最も適切と思われるものを選択するために、中脳黒質からのドーパミン量によって直接経路を抑制するか否かで最終的に1つの運動が発現するのですが、ここの抑制がきかなくなってしまうと運動としてエラーが出てしまうことが多いです。


そのご発症後の様々な学習(スキーマや大脳基底核を支配する前頭野での)によって本人の中での成功体験となっているのだと思うのですが、この時期にこのままその運動パターンを繰り返すことは其れが運動プログラムとして強化され成功体験となりほかの機能を使用しなくなることにつながります。

※脳外臨床研究会 山本先生の講義資料より
このスライドの通りで、急性期の脳卒中(特に被殻出血の方)では危険行動が多く、逆に回復期~維持期もしくはパーキンソン病の方などは動作が起こせないもしくはワンパターンの運動になったりしています。



この時期のポイントは
・両側の上下肢・体幹を用いて適切な難易度で(なんとかできるかなー?くらい)イメージしやすい運動を提供する

この1点に尽きるかと思います。


両側性の課題をイメージングして行うことは、非障害側の同側に下降する皮質脊髄路の賦活につながることがメリットになりますし補足運動野を介して大脳基底核の運動ループの賦活につながっていきます。



それをずっと同じ課題を反復練習するのでなく、いろんな事を経験してもらえるようにすることで生活の幅が広がるかと思います。


それが、きっと回復期での課題指向型でのリハビリテーションでの真骨頂だと思います。

(間違っても、同じ運動パターンをできているのに何度も何度もしつこく行うことではないことを強く強調したいです。本当にそういうセラピスト、多いので。時間の無駄です。)


c.シナプス伝達の効率化(3rd stage)

脳卒中の回復は6か月までといわれますが、脳の可塑性や皮質間ネットワークの興奮性の増大が終了しても、脳卒中の方々が回復することは本当に多く見られます。


まずはそもそもの残存機能があることもありますし、生活の中で2次的な要因(廃用性筋萎縮や関節の柔軟性低下)もあるかと思います。


それらを除外して考えたとき、神経のシナプスの影響が考えられるといわれています。


特定の刺激が繰り返されると、その刺激に対応した神経細胞間のシナプスが繰り返し発火されると細胞間間のシナプス結合の強度が変化するそうです。

脳卒中回復におけるシナプスから行動における脳の可塑性

(↑このブログの記事にめっちゃ詳しく書いてくれています。

Plasticity during stroke recovery: from synapse to behavior:Nature Reviews Neuroscience
という2009年に発表されたおそらくシステマティックレヴューの論文を和訳してくれています。

内容は部分的に見たことがあるので、たぶんめっちゃ有名な論文です。)



つまり、特定の運動による刺激や感覚入力が繰り返し、一定の感覚で行われるとシナプス間の連結が良くなって運動効率があがるよということだと思います。


適切な運動課題や感覚入力が在宅領域では非常に重要になってくると思われます。



そこは次の章で書きますが・・・


脳卒中のリハビリテーションでいえることは、



急性期・回復期・維持期のどの領域でも、それまでの経験に依存して運動や行動、ひいては思考が決定されている



ということです。



急性期でのエラーは回復期にも引き継がれますし、回復期での誤学習は在宅領域でも再生されます。



それぞれの領域で何をすべきかを考えながら、リハビリテーションを展開していくべきです。




環境設定は本人も大事だが、同居する人のことを考える!

ここまでは機能回復のことを書いていきましたが、きれいごとばかりでうまくいかないことも非常に多いです。


・離床が大事って言われても、バイタルコンロトールがうまくできてなくって急性期では全然動けないまま回復期です・・・


・高次脳機能障害が重篤でリハがうまく進んでいない




そもそも早期離床のエビデンスって、その時期から離床できる患者さん=状態わるくないから回復も早いってことだと思うんですよね。



そのレールに乗らない人たちはどうすればいいのか?



そこで大事なのは環境設定だと思います。



急性期であれば、ベッド上のポジショニングや車いすのシーティングなどです。



回復期~維持期では、退院し在宅復帰という大きなイベントが待っています。



回復期のセラピストにとって大事なのは、事前に家屋の情報を収集し予後予測から患者さんの回復後はここまでの動作はできるだろうといくことをかんがえ、その上で目標を設定し、無理な部分は介護保険制度を利用する、住宅改修を行う、そして同居する家族の方に手伝ってもらうという流れになります。


その流れを確認するために、必ず私が行うべきだと思うことは、



患者さんの自宅訪問指導を行う際や、退院時のカンファレンスに利用予定の訪問や通所リハのセラピストに同行してきてもらうことです!

リハ カンファレンス
カンファレンスは患者さんに関わる全員と顔を合わせれるチャンス


回復期、在宅領域のセラピストが同時に患者さんを診れる機会ってこの2場面くらいしかないですし、ここで考え方のすり合わせを行っておくことは本当に大事です。


じゃないと上の内容みたいなセラピストになりますよ。笑


そうすれば、家族のかたへの指導も在宅領域の人も行いやすいでしょうし、回復期のセラピストとしてはどんな部分がまだ足りないのかがよくわかり、そこも踏まえたサービスの提供を提案できるようになると思います。


サービスの提案の際は、本人のことも大事ですが一緒に一生を過ごすことになろうご家族のフォローが最も大事かと個人的には思います。


そこの情報をシェアできるようにするためにも、ぜひ回復期と在宅のセラピストは顔合わせをしてください。







久しぶりのブログは少し長々と書きすぎました。



具体的な内容までは書いていませんが、私の脳卒中に対しての基本的な考え方は以上です。


また皆さまのご意見をいただけますと幸いです。


参考文献
1:理学療法ハンドブック第4班 第1巻 「姿勢制御」の章より

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2:理学療法ハンドブック第4班 第2巻 「ボバース概念」の章より

治療アプローチ(理学療法ハンドブック 改訂第4版)
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3:脳卒中最前線 第3版

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4:コツさえわかればあなたも読める リハに役立つ脳画像

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7:井上勲, 運動機能回復を目的とした脳卒中リハビリテーションの脳科学を根拠とする理論とその実際,相澤病院医学雑誌 第8巻,2010



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