水泳選手をサポートしていると必ずといっていいほど「肩の痛み」に遭遇します。
肩関節を痛めてしまうと、泳ぐ際に痛みが出てしまい、満足に練習や補強ができなくなってしまいます。
その結果、コンディショニング不良の状態で試合に臨み不完全燃焼で終わってしまう。
このような選手を診た経験は何度かあり、そのたび胸が締め付けられる思いに駆られます。
水泳選手の方の痛みは「水泳肩」と総称していわれます。
今回は水泳肩の原因と、セルフコンディショニング方法について説明していきたいと思います。
どちらかといえば、選手やコーチの方に見ていただきたい内容になっています!
なぜ水泳肩になるのか?
泳法によって変化はしますが、水中を進む際に必要な推進力は腕のストローク動作(水をかぐ動き)によって生み出されます。(以下引用文献を参照)推進力の依存率は、クロールでは60~80%、背泳ぎが60~70%、バタフライが50~60%あるのに対し平泳ぎは30~40%とされ、推進力の発揮システムが大きく異なる。(小泉,スポーツ理学療法学第2版,2018)
練習量によりますが、1回の練習で何千回とストローク動作を繰り返すことになるので、水泳選手の肩関節にはオーバーユース(使いすぎ)による慢性スポーツ障害が生じやすくなってしまいます。(下図参照)
水泳肩の発生機序(半谷ら,臨床スポーツ医学,P1102,図3,2016を一部改編) |
水泳肩はストローク動作で肩関節を動かすときに付着する筋肉が多い、上腕骨大結節が肩峰(肩甲骨の端)を通過するときに、インナーマッスルの一つである棘上筋や上腕二頭筋(力こぶの筋肉)が挟み込まれてしまうことで痛みが出てしまうことが多いとされています。
肩関節の解剖図(©teamlabbody) |
肩峰の下に組織が挟み込みこまれることを肩峰下インピンジメントと呼び、インピンジメントが反復することによって棘上筋や上腕二頭筋には炎症が起こってしまうことが多いです。
また肩峰下には滑液包という関節内の潤滑しやすくするための液体を分泌するものがあるのですが、痛みを非常に感知しやすく、肩峰下の圧が上昇することで痛みが生じてしやすくなるのも水泳肩の症状と考えられます。
インピンジメントが起こるタイミングとしてはストローク動作のキャッチやリカバリーの際に起こるとされており、水泳肩の症状がでやすい選手の特徴としては、ルーズショルダーであることや、肩甲骨異常運動(Scapular Dyskinesis) を有することが言われています。
また水泳肩に関しては以下のようなことも報告されています。
肩障害発生の技術的要因の一つに、自由形やバタフライのrecovery動作時の過度な肩水平伸展がある(加藤. MB Med Reha. 2003)
ジュニア選手では男子は肩関節の可動域低下、女子選手では関節弛緩性が肩障害に関係 (三瀬ら,第30回臨床スポーツ医学会学術集会)
肩痛を有する場合は代償的な胸椎回旋の動きが生じる可能性がある(高山ら,第16回肩の運動機能研究会)
Scapular Dyskinesisの保有と肩関節の2nd外旋可動域(肩を横に90°挙げて手首を後ろにもっていく動き)が105°以上有することが肩関節障害発生と関連している(松浦ら,水と健康医学研究会誌22,P21-29,2020)
そして、私が現場や臨床で見ていて感じる水泳肩の選手の特徴として、
・肩関節の後ろにある筋肉や関節周りの組織が固くなっている【肩関節後方タイトネス】
・胸郭(肋骨周り)の動きが固い
・肩関節のインナーマッスルや肩甲骨周りの筋肉の機能が良くない(≒筋力低下)
この上記3つが組み合わさり、姿勢の悪さがあるとパフォーマンス低下や肩の痛みにつながる感じがします。
これらに対しては自身で時間を作って、セルフコンディショニングを行う必要があります。
水泳肩を改善するためには
肩後方タイトネスの改善
肩後方組織の柔軟性を改善するためには、上記のストレッチ方法がおススメです。
肩インナーマッスルの筋機能改善
とくにルーズショルダーといわれる「緩い肩」の選手は特に重点的に行う必要があります。
肩甲骨周囲筋の機能改善
肩の痛みが生じる場面として多いのは「キャッチ」の場面が多いです。
ローリングの獲得(胸椎回旋)
色々な胸郭回旋のエクササイズがありますが、個人的には上記のExerciseがかなり効果的な印象です。
ダイナミックストレッチに分類されるようなExerciseですので、ウォーミングアップに行うこともおススメです!
水泳肩のリスクの確認や、パフォーマンスアップのためには専門家の手を借りるのも一つ!
ですが適切なセルフコンディショニングを行うことで、ある程度防ぐことも可能であると考えられます。
今回紹介したコンディショニングはごく一部のものであり、症状によってはトレーナーなどの専門家に診てもらうことが適切な場合があります。
痛みが強い場合は、スポーツ整形外科や治療院などで実に診てもらうことをお勧めします。
もし大阪在住の方であれば、
○私が土曜日限定で行っているパーソナルコンディショニング
●スポーツチームやアスリートへの出張トレーナーサポート
などの事業を行っております。
水泳肩の症状のみでなく「ベストパフォーマンス」をだすお手伝いをさせて頂きます!
簡単なご相談も受け付けますので詳細はリンクをご参照ください。
参考文献
・半谷美夏ら,水泳-競泳選手におけるスポーツ障害とその予防-,臨床スポーツ医学Vol33,P1100~1106,2016
・坂口健史ら,水泳(競技種目別医療に必要な知識-東京2020に備えて-),臨床スポーツ医学Vol37,P376~381,2020
・小泉圭介,競泳,スポーツ理学療法学第2版,P110~131,2018
クリックすると、ランキング投票になります。
よろしくお願いします!
にほんブログ村
こちらももしよろしければ・・・
理学療法 ブログランキングへ
0 件のコメント :
コメントを投稿